元オペ室看護師が徹底解説!全身麻酔ってどんなことが行われているの?流れから見る全身麻酔の副作用や合併症

甲状腺
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今回甲状腺癌が分かり、実際に全身麻酔下での手術(甲状腺片葉摘出術+リンパ節郭清)を受けてきました。全身麻酔だと入室して麻酔薬が体内に入ってくると本当にすぐに意識がなくなってしまうものなんですね。次に目が覚めたらすでに病室に戻ってきていました。眠っている間に、すべてが終わってしまいます。

それではこの全身麻酔とはいったい何なのでしょうか。副作用や合併症はどのようなものがあるのでしょう。また意識がなくなってしまってから手術開始までどのようなことが行われているのでしょうか。今回はこの全身麻酔について詳しくご紹介したいと思います。

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 全身麻酔とは

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まず全身麻酔とは意識や痛み、手術する際に有害となる反射を消失させる麻酔方法です。多くは麻酔薬を用いて鎮静(意識・疼痛の消失)を行い、有害な反射を消失させるために筋弛緩薬を用いて全身の筋肉を弛緩させます。

つまり麻酔薬で深―――い眠りにつかせたあとに、筋弛緩薬で身体をだらりーんとさせることで、患者さんは痛みを感じなくなるうえに身体はだらんとして動かなくなり、医師は手術をしやすくなるということですね。

起こりうる合併症

術後の悪心・嘔吐、頭痛など

全身麻酔で使用する薬剤は大脳皮質を抑制することで、意識を低下させるはたらきがあります。大脳皮質を刺激することで悪心や嘔吐などを引き起こしたり頭痛の原因となることがあるため、術後にこれらの症状が起こりやすくなります。

薬剤アレルギ

全身麻酔ではこのように多くの薬剤を使用します。そのため場合によっては薬剤に対するアレルギーを引き起こす可能性があります。

入室前の準備(at 病棟)

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弾性ストッキングの着用

深部静脈血栓症の予防

手術の間は前項のようにに深―い眠りにつき、長時間同じ姿勢でいることになります。そのため血流が悪くなり、下肢に血栓ができやすくなってしまいます

エコノミークラス症候群という言葉を聞いたことはありますか?これは長時間のフライトで同じ姿勢をとっているために、下肢の血流が悪くなることで血栓ができやすくなってしまうことなので、要はこれと一緒です。そのため、下肢の血流を良くして血栓ができるのを防ぐために、このように術前から弾性ストッキングを着用する施設が増えています。

前日の夜から絶飲食

誤嚥性肺炎や無気肺の予防

胃の中に食べ物が残っていると、麻酔をかけられたときに逆流してしまうことがあります。そうすると、逆流したものが肺に誤って入ってしまうことがあり、それが誤嚥性肺炎や無気肺を起こしてしまう可能性があります。そのため大体術前8時間くらいは絶飲食とされることが多いようです。

準備ができたら、いざ入室

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まず手術を受けるために、病棟の看護師さんに連れられて手術室へ入室します。手術室につくと手術室の看護師が待っているので、ここから先は手術室の看護師さんと一緒に手術するお部屋に向かいます。このとき患者や手術部位の誤認を防ぐために、自分で生年月日や名前、手術部位を名乗ってもらいます

また歩ける患者さんは基本的に歩いて手術室まで向かいます。

手術室内へ

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実際に手術するお部屋についたらベッドに移ります。このベッドは手術しやすいように幅が狭くなっています

ベッドに移ったらまず点滴をとります(病棟で点滴をとってくることもあります)。その後酸素マスクをあてて十分な酸素で肺を満たします。これは次項で述べる「気管挿管」をする際に、身体に十分な酸素がある方が時間的な猶予が生まれるため、しっかりと身体を酸素化必要があるのです。

いよいよ全身麻酔!

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点滴ラインを確保し、十分な酸素化が行われたらいよいよ全身麻酔です。全身麻酔は点滴から麻酔薬を投与しますが、主に鎮静目的で用いられるプロポフォール®によって血管痛が起こることがあります。でも多くは気づいたら意識が消失しているので、それも一瞬の出来事です

気管挿管

全身麻酔をかけると自分で呼吸をすることができなくなります。そのため口から気管へ、呼吸を助けるための管を入れます。これが気管挿管です。これにより麻酔器で人工呼吸を行います。ただし口腔内の手術や開口制限がある場合などは鼻から挿管する経鼻挿管が行われることもあります。

起こりうる合併症

歯牙・口唇・舌などの損傷や、嗄声・喉の痛み

この気管挿管は麻酔科医が喉頭鏡(ブレード)を用いて口を大きく広げ、舌をよけるようにして口腔内の視野を確保し、気管チューブを気管内に挿入します。術後上下口唇や舌が痛いことがあるのはこの時の操作でブレードがぶつかったりするためです。また手術の間ずっと気管内にチューブを挿入しておくため、術後喉の痛みや嗄声が出現することもあります。ですがほとんどは一時的なものなので多くは数日でよくなります。

私も術後右の上唇と喉が痛かったですが、術後3日目ころにはほとんどなくなっていました。

喉頭痙攣・気管支痙攣(喘息)

気管チューブを挿入する際に、喉頭や気管を刺激することで起こることがあります。これは十分に麻酔や筋弛緩薬が効く前に挿管が行われる場合に起こりやすいとされますが、もともと気管支喘息の既往がある人はこのリスクが高まるとされています。術前に喘息の既往の有無を聞かれるのはこのためなんですね。

不整脈

麻酔深度や麻酔薬の量によって、不整脈が起こる場合があります。

ライン類の確保(点滴・フォーレ)

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気管挿管をして気道を確保したらほかのライン類をとります。

患者さんの全身状態、術式などによって点滴を2本以上とることもあります。

また全身麻酔ではほとんどの場合おしっこの管(フォーレ、フォーリーカテーテル)を入れます。これは術中の水分出納バランスを観察することや、術後安静で長時間トイレへいけないために留置されます。

体位作成・保温

ライン類をとったら次は体位作成です。主な体位としては仰臥位、側臥位、腹臥位、砕石位などがありますが、これらは手術部位や術式などによって大きく異なります。手術中はずっと同一体位のため、術後に身体が疲れたような、凝っているような感じがあることもあります。

また全身の筋肉が弛緩していることや、手術ベッドは幅が狭いことなどもあって、そのまま手術をするとベッドから落ちてしまう危険性があります。そのため手術中は落下防止のために手や足などをバンドでベッドに固定します。

起こりうる合併症

皮膚の発赤・水泡など

手術中、ずっと同じ体勢でいると下になっている部分の皮膚が赤くなったり水泡ができたりすることがあります。これは体重が同じ部分にずっとかかってしまうことや、ベッドなど接している部分が擦れたりすることでおこります。

これを防ぐために、手術室看護師は除圧グッズ等を用いてなるべく患者の身体に負荷がかからないような体位を作成し、30分毎に体位の確認を行っています。

術後の身震い(シバリング)

寒いときにぶるぶると身震いすることはありませんか?厳密にいうと少し違うのですが、麻酔覚醒後にこれと似たような状態になることがあります。これをシバリングといいます。

手術中は体温が下がりやすい状態にあるのですが、通常体温が下がると、脳にある体温調節中枢がはたらいて、体温をあげようとします。身震いは筋肉の収縮で、これによりエネルギーが生産されることで体温が上がります。

ですが麻酔がかかっている間は、多少体温が下がっても体温調節機能も麻酔がかかっているため抑制されています。手術が終わり、麻酔から覚醒すると体温調節機能も同じように再稼働します。このとき、脳は体温をあげようと筋肉を収縮させて震えます。これがシバリングです。このときに悪寒・戦慄を感じることがあります。

このシバリングは体温調節するための生理的な反応なのですが、患者にとっては有害なのです。シバリングは通常の身震い以上に震えが大きく、酸素の消費量も多いため低酸素血症や血圧上昇などの原因にもなってしまいます。術後の疲弊した身体には酷な状態ですね。そのためこれを予防するために、手術室看護師は手術部位以外はしっかりと覆い、保温に努めています。

マーキング・タイムアウト

手術を行う体勢が整ったら、手術部位のマーキングとタイムアウトを行います。タイムアウトとは執刀医・麻酔科医・看護師が全員手を止めて、患者の名前・生年月日・手術部位を確認する時間です。この時に各視点からの問題点があれば挙げて情報共有することで、起こりうる問題に迅速に対応できるようにします。

そして、いざ手術。

まとめ

全身麻酔の時は、眠ってしまってから手術までこのようなことが行われているんですね。見ての通り、患者の取り違えや手術部位間違えなどを防ぐために、何重にも確認を行っているため、近年ではこれらの誤認は大幅に減少しているようです。

また術後は病棟へ戻る前にほとんどの場合は気管チューブを抜いて帰ります。これを抜管といいます。抜管は患者がしっかりと覚醒し、自発呼吸があることが確認されてから行われるため、最初に目が覚めたときにはまだ気管にチューブが入ったままの状態です。そのためその時には苦しさを感じる場合もありますが、抜管は割と一瞬で終わるため、抜けるとすっきりします。私は鎮静がかなりしっかり効いていたようで、覚醒時の記憶は正直ほとんどありませんが、抜管時はやっぱりなんだかちょっとすっきりしたのを覚えています。

まとめると、全身麻酔で起こりうる合併症は以下の通りです。

  • 術後の悪心・嘔吐・頭痛など
  • 深部静脈血栓症
  • 誤嚥性肺炎・無気肺
  • 歯牙・口唇・舌などの損傷や、嗄声・喉の痛み
  • 喉頭痙攣・気管支痙攣(喘息)
  • 高血圧・頻脈・不整脈
  • 術後の身震い(シバリング)

手術室内では、医師や看護師をはじめ、医療者がチーム一丸となって手術に当たっています。常に異変がないかどうかをチェックし、合併症などが起こらないよう予防しながら手術が進められているんですね。もう全身麻酔が必要な手術は受けたくないな~と思いますが、また手術室看護師に復帰したときは、自分が不安だった気持ちも思い出し、患者さん第一で仕事をしたいなと思います。

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